あやつられている


最近涙もろくて,という話を医者にするとオートマティックに薬が増えた.
今度の薬はまた今までのと似たような症状に効き,また似たような副作用を
引き起こす.とにかく口が渇いてしょうがない.よく冷えたお茶をがぶがぶ
飲んで渇きを癒す.身体に嘘をつきながら生きていくのはめんどくさい.

脳みそ系のお薬は効き目が出るまでに数週間待たないといけない.そのため
もし薬が身体に合わなくても時間をなんとか乗り越えなくてはならない.
今回の薬は断薬時の副作用がそうとう激しいようで,自己診断であれこれと
手を加えることはできなさそうである.だけど耳鳴り頭痛吐き気めまい,
どれももう馴染みの症状.いまさら増えたところで,などという虫のいい
ことを並行して考える.ものごとをきちんとしないから心の軸がどっかへ
転がっていったというのに.処方箋を見ながら自責の念にかられまくる.

そういえばこの間呼ばれた宴会.みんなで乾杯する時やひとにビールなど
おつぎしている際に手がぐらぐらふるえまくり,却って心配される.無論
酒の影響ではなく薬の影響であると思われる.かといって薬を服まないと
別方向に壊れていくのでそれも厄介な話.たかが30数粒のくせに,と思うも
されど30数粒,一日で7種類の薬を服み続けているのはやはりそれなりの
良い効果とよくない副作用とで身体が操られているからなのであろう.
今のところ薬を切らしたことはほとんどないので,本当に薬がなくなったら
どうなるか,という状態に陥ったケースがない.数年間自然断薬していた
時期はあるが,それがあまり良い効果をもたらしていたような気配はない.

いいかげん年も食ったのだから,そろそろそれなりに落ち着きたいものだが
それもまだまだ儚い夢というものであろう.睡眠に操られ憂鬱に操られ,
そして今も薬に操られている.自分が育たないまま自分以外のなにかが
頼みもしないのにかってに育っていった気分にもなるが,それはたぶん
大いなる誤解と負け惜しみであろう.自分で責任が持てないからといって
いもしない他者に責任を食らわそうというのは太い腹である.それでも,
薬ひとつぶを服み下すごとに,いろんなことを諦めていくのである.それは
ときどき無性に哀しくて,ついほろほろと涙がつたうことも,たまにある.


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