うすいかみそりの刃で
ひだりの手首を撫でる
そう簡単にからだは
ひきさかれるものではないので
何度も
なんどでも
繰り返して
これまで愛してくれたひとに
ごめんねと ごめんねと
泣きながらつぶやきながら
たとえ心は冷めていても
流れ出る体液の色があたたかい
ああかなしいな
腕をかかげて
目を閉じてしまう
それは祈りの姿勢であり
なみだは独りでのつぐないである
先もなく後もなく
自らを傷めることとは
こういうことだったのだと理解する
それでもいつもうまく生きられなくて
何度も
なんどでも
繰り返して
うすいかみそりの刃で
泣きながらつぶやきながら
ああかなしいな
流れ出る体液の色があたたかい