見えない真綿が包む生活


月曜日,目が醒めたら16時40分だった.鬱蒼とした気分でなにか心の中を
埋めるかのごとく洗濯をした.洗濯をした.やりきれない思いはどこにも
持って行けない.ただひたすら自分がロウになっていく.このままでは
よろしくないと思い,今日結果的にサボってしまった授業の担当教官へと
メールを書く.必要な用件数行,不必要な用件十数行.病状が悪化して
いるということだけはわかってるのだけれど,それから先どうしようも
ないやるせなさをもこもこと綴る.お返事は来たけれど,やはりなにより
主治医のことを信じてそちらについて行くのが一番であるとのお返事.
心理の専門家は心について思うところをみだりに述べたりはしないのだ.

火曜日.目が醒めたら10時だった.薬のせいでだるい身体を引き起こして
めずらしく朝ごはんなるものを食す.といってもパンをむしゃらくしゃら
食っただけ.でもそのままぱたりと寝た.ちょっと身体の調子が悪くて,
鼻や喉がダメになっている.今日は出られそうもなかったので先手を打ち
今日の担当先生にメールを出す.ネイティヴなので全部英語だ.授業の
内容について質問と,自分で用意してみた article でよいのかどうかの
確認作業.たどたどしい英語は向こうで言うチャレンジャブルな小学生と
大差ない,と自分でも思う.英語で日記でも書いてみることにすべきか?

しばらくだらだらと雑務.引っ越しの荷物整理がいまだ滞ったままなので
少しは本棚に荷物を詰める.しかし引っ越し時に荷物が混じったものが
いくつもあり,この本はぼくのだけどこの本はぼくのじゃない,という
分類わけがまた大変.本を読むのは集中力がいるので最近ごぶさただが
単純肉体労働だけならなんとか.運ぶ,ほどく,まとめる.…つくづく
自分が頭脳労働者階級にいること自体おこがましくてしかたなく思う.

メールの返事.…却って訳が判らなくなる.こんなことなら詰まる鼻や
腫れる喉を掻き破ってでも学校に行った方がよかったかもしれない.
さらに指導教官から「今日授業じゃなかったっけ」とのメールが届く.
はて.Dの人と「勉強会しよーよ」みたいな話はちろりっと小耳に挟む
程度には聞いていたのだが,もうテキストもシラバスもスケジュールも
全部決まってるなんてビタイチ聞いてませんぞ.あわててそのコマを
確認し,テキストをネットで購入.さらにもうひとつの授業のほうが
テキストの正確なタイトルが判らず,そちらのほうへ確認作業を行う.

結果.見事に違うテキスト買おうとしてました.レジボタン押さなくて
よかった本当によかった.でも今回の論文テキストだけで相当の出費が
ぼくの口座からサヨナラしちゃったんですが.もうきっとあと5万円を
切っているはず.バイトしたくても,そちらに費す時間があれば少しは
論文を読む時間に回したい.かといってド短期の複雑肉体労働のほうは
体力に自信がないし.とかいってうぢうぢしてるからバイト先が全然
決まらないのであろうか.ともあれ生活しなくては.晩ごはんの用意を
しゃかしゃかと始め,タマネギを微塵に切ってじゃがいもを茹でる.

友人から電話.今日は遅くなるから,とのこと.…この作った料理を
どうしてくれよう.やっぱりひとりで食べるごはんって味気ないな.

あとかたづけをして,ふう,と吐息をつくと身体中からエネルギーが
吹き飛んでしまう.その場でへたりこんで時間が過ぎるのを待った.
このじわじわした圧迫感はなんとも言いがたい気色悪さである….


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