正しくない首の吊りかた
世間様ではゴールデンウィークまっさかり.40kmの渋滞をものともせずに
車で移動する向きもあるようですが,個人的にはなんだか連休前くらいから
気分が暗くくらーくなっておりました.いつだって理由なんてないんですが
無性に未来が見えないというか,まあそういう気分だったわけなのです.
一歩たりとも進めない自分に苛立ちだとか絶望だとか今更しておりまして,
気がついたらそうだ消えてなくなってみればいいんだという方向へと考えが
シフトしていました.そして幸いなことに,引っ越しの支度がまだ終わって
いなかったためにそこらじゅうに荷作りのヒモが散乱していたわけですね.
以前天井のフックにヒモをかけてフックごと落ちた苦い経験があるので,
今回は丈夫だろうと思われるドアノブでチャレンジすることになりました.
本をくくっていたヒモをたぐり,二重にして首にかけ,それから引っ張ると
締まるようにうまくあしらい一方をノブに引っかける.…う,長すぎる.
腰が床にぺたんと着いてしまっては意味がないので,もう一巻きしてみて
ちょうど腰が床にギリギリくらいの長さに整えれば.…今度は短すぎた.
引っかける部分が短すぎてノブにうまくかけられない.困ったものです.
新しくヒモを切り直すほど気力もなかったので,別の転がってるヒモで再度
トライしてみる.あ,今度はなんかいい感じ.長すぎず短すぎず,腕と腰が
ちょうど床で突っ張るくらい.なお,「首を吊る」のと「首を絞める」のは
苦しさが違うんですね.「絞める」のは息ができなくなって喉の奥の方から
ひこーひこーと音がするんです.で,これは結構苦しい.うまく「吊る」と
血管が絞められるので息ができなくなるより先に頭じゅうが痺れてきて,
すとんと落ちるように気を失うわけです.うまくその状態に持っていって
座り込み,身体をずどんと投げ出せば終わり.えい,やっちゃえ.ずどん.
…失敗したのは,座り込んだ状態から身体を押し出すために後ろに回した
腕が身体を支えになっちゃったからです.やる気があるんだかないんだか.
ともあれ死んだーと思い込んで,そのまま気を失ってしばらく眠っていた
らしいんです.自死しようとした人間が「気がつくと」もあったもんじゃ
ないんですが,気がつくといかにも中途半端な姿勢で首をくくられたまま
普通に座っているのと大差ないくらいの状態になってました….やれやれ.
その後ものすごい空虚感に襲われ,72時間くらい何も食べられなかったのは
言うまでもありません.同居人もぼくのそういう病的な性質をわかっている
ひとなので,何も言わずに見守ってくれていましたが.今冷静に考えると
自分の部屋で居候に死なれたくはないよなあ.ともあれなんにもできずに
ただ睡眠薬を適量あおってひたすら眠っていました.今日になってようやく
人といくぶんまともに話ができるようになってきたところです.それまでは
誰かと目を合わせることもできなかったし,外にも出られなかったし….
吐き気はするものの出す内容がないのでただ苦しいだけだったし.ぐふう.
そしてまた日常の生活に戻ってゆくわけで.何かいいことないですかねえ.