専門家は濃縮されゆく
憂鬱な気分で帰宅.郵便受けを覗くとなんか馬鹿デカい郵便物が.これは
もしかしてひょっとすると.ということで開けちゃうよ開けちゃおう.
こっそり受けていたアロマテラピー検定,一級二級ともに合格してました.
馬鹿デカいのは合格証書が折曲げ厳禁で入っていたから.それからほかに
アロマテラピー協会からのパンフレットなどと専門誌が一冊.あれこれと
眺めてみたんですが,この専門誌のマニアックさはなんか半端じゃないぞ.
一般人にはとてもお勧めできないそれはもう濃ゆい内容の記事そして広告.
「イランイランは一種類のみですとどうしても重たい感じになりますが,
柑橘系の精油,例えばグレープフルーツ,オレンジスイート,レモンなど
加えると花の香りが引き出されますよ」「最近の名古屋大学環境皮膚科の調査報告では,ラベンダーは皮膚刺激が
高いと報告されています」「富良野のラベンダーは七月下旬〜八月上旬が最も美しいそうです.まだ
行かれたことのない方はぜひ一度足を運んで見てください.一面紫色で
とても心が癒されます」
…なんか万事こんな調子なんですけど.とっても高邁な啓蒙を受けたかの
ような,うさんくさーい宗教にだまされかかっているような,おハイソな
会話について行けない貧乏人のひがみでしょうかそういう感想を抱くのは.
でもここでふと思う.学校でやってる言語学だって他の分野のひとにとって
おんなじようなもんじゃないかなと.世の多くの人はUG理論を知らないし
ジャスミンのオイルの効能を知らない.traceroute というコマンドが一体
なんのためのコマンドなのか知らない人もいれば,クドリャフカがどんな
運命をたどったのかを知らない人も,ノリトレンがどのような薬理作用を
人体に引き起こすのかを知らない人も,みんなフツーに生きてるんです.
昔どこかで聞いた箴言,「一般的な学問は役に立たない,専門的な学問は
ツブシがきかない」というのをふと思い出してしまいました.いやあなにせ
大学院などと言うところは専門家のカタマリみたいなもんどころかカタマリ
そのものですから,なにをやっていても他の人はうさんくさく感じるのでは
なかろうかなどと思いをめぐらせてしまいましたよ.周囲から理解されずに
コツコツ理論を組み上げていって,一般の人たちから「それがどうした」と
ひとことで片付けられてしまう(世の役に立たない系の)専門教育ってのは
どうなんでしょうねえ.もちろん学校側もいろいろと専門バカを作らない
工夫はしてあり,いろんなカリキュラムが用意されているわけですが….
大学院のカラーが強いため結局行きつく場所は同じ,ような気がします.
こないだ授業で「このなかで量子力学について本を読んだことのある人,
挙手願います」とのことで挙手したのは二人.ぼくは手をおろしたまま.
量子力学の専門書を読み通す気力なんてありません.ぼくが知ってるのは
たんなる雑学です雑学.量子力学について知ったのも役にも立たない雑学が
元ネタですが,とても手を挙げられるレベルのもんじゃなかろうと思って
のほほんと傍観していたんですね.結局は雑学レベルで留まっているのが
ぼくの性格にはあってるのかもしれません.専門的なことをどわーっと
知っていて他がダメ,という状態よりは,そんなに深くもないけれども
雑学としていろんなことを知っている,というのはなんかしっくりくる.
まあぼく自身何になりたいか特に考えることもなくふらふらしてる身なので
せめて雑学だけでも,と思ってるんですが….そんなヒマあったら本業に
時間をまわせ? …うう,言い返せない.だけど濃縮された学問には確かに
他に移るためのツブシが利かないのも事実.完全に他の分野へと移り進む
場合は別として.…あぁあ,やっぱり完全に違う世界を覗くべきなのかな.
そんなこんなをつらつら思い遣り時間が過ぎてゆく.まあ考えすぎてても
仕方のないことなので,白菜と豚肉と油揚をことこと煮た奴でも作って
ごはんを食べることにしよう.悩みごとはとりあえず目醒めてからの宿題.