特技,長所,得意科目


諸君,就職活動とかいうものをするにあたってまず第一にやらねばならぬ
ことがある.履歴書というものをひたすら埋めなくてはならないのである.

「履歴書のかきかた」みたいな小冊子に書いてあるところによると,なんと
履歴書というものはペンで書くくせに修正が効かないという.たった一文字
間違っただけでもその書類は破棄しなければいけないというのだ.うえー.

まずは名前.こんなもんならすぐ書ける.生年月日性別.これくらい上等.
住所.ちょっとつまづきがちだがなんとか.学歴.…これがまたどえらく
曲者であり,小学校と中学校は卒業だけ書けばよいのであるが高校からは
入学も卒業も両方ぐだぐだと書かなくてはならないのである.しかも高校は
きちんと「高等学校」と正式名称で書く必要がある.もうほとんど写経.
精神を統一して心を無にして取り掛からなくては,ついうっかり「入学」と
「卒業」を間違えてしまったり,「博士課程」を「博士過程」と書いたり
してまるまる一枚パァにしてしまったりするかもしれないという危険性を
孕んでいるのである.ていうかやっちゃいましたごめんなさいすみません.

さあ気を取り直して,免許資格.昭和58年アマチュア無線技士電話級取得,
平成10年初級システムアドミニストレイター取得,平成14年アロマテラピー
検定1級取得.…我ながら好き放題やってるなという感じ.役に立ちそうな
ものがひとつたりとてないというのはいったいどういうことなんでしょう.

特技,長所,得意科目….とくぎ.いったいなんですかこれは.アレですか
皿回しができるとか円周率を100ケタまで暗証できるとか心の眼で見る事で
CD-ROMを読み取る事ができるとかそういうことですか? なんかものすごい
違和感を憶えつつなんとか書き込む.長所って言われたってねえ….そんな
悪い方向へ自意識過剰な人間に向かって長所をあげろっつったって無理.
でも「無理」と大書するわけにもいかないので無理矢理にでも捏造する.
で,そういうものを書き込む時に限ってエラーが発生するものなのである.

しかし人間というのはよくしたもので,何枚も反故にしているうちに徐々に
体に染み通っていくものなのか,間違えずに書けるようになるのである.
「人間やればできる」なんてウソっぱちだと思っていたが,すべてがすべて
そうでもないようだ.そしてわたわたと封筒に入れてあちこちに送りつけ
反応を窺っているところである.さあて,この先どうなりますことやら.


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