人生は百色眼鏡
ある日寝惚けたまま会社に行って,眼鏡をかけてないことに気づきました.
仕事には随分と差し支えるけど,こういう日に限ってそんなに忙しくなくて
ほっとするやら気抜けするやら.でも仕事の手が空いてる時にやろうと
思っていたプログラムの勉強も出来なくて,結局手持ち不沙汰でぶらーり
中途半端に吊り下げられた気分.視野の焦点が合わないから頭痛もするし.
ようやく回って来た一通の仕事にすがるように問題を解決して行く.幸い
込み入ってはいるけれどもシンプルな仕事だったので仕事機械人形となって
しらみつぶしに解決.コラムも書き上げたことだし今日はもう帰ります.
帰りの夜景が乱視に滲んで霞み,それはまるで万華鏡のよう.赤い信号も
黄色い注意灯も白い街灯も,みんなみんな焦点がずれて鏡の筒に通したかの
ように見えてきました.目が悪いというのは確実に疾病のひとつなのですが
こんなに綺麗な病気ならたまにはいいなあと.夜景がきらきらひかりながら
視野をひゃくいろめがねに染めてゆきます.ちゃんとした目の人や,眼鏡や
コンタクトレンズで矯正をした人は気づかない,とても美しい光の軌跡に
包まれて少し幸せな気分になりました.もっとも,目の疲れから頭痛だけは
延々続いていたんですが.さすがに綺麗な物に目を奪われるのはいいけれど
うっとりそれだけやってるのもアレなので,家に帰って眼鏡をかけました.
眼鏡をかけたあとは,そこは視野の定まったまともな世界.もう月を見ても
飛行船の襲来には見えないし,街の灯りも普通の夜の街並み.眼鏡の力は
すごいなあと思いつつ,ヒマな時には眼鏡を外して夜の街を散歩するのも
悪くないなと思いました.ぼくだけが持つ百色眼鏡,結構綺麗だったから.