悟るにはまだ早い


昔からがっつかない子どもでした.なんというか無欲というか,ひとまず
そこにあるもので満足したりして.本を読むにも図書館という強い味方が
あったので,特にそのへんで金を使うことはなかったような気がします.

小学校や中学校の間はそれでよくても,高校生ともなれば欲しいものを
買うために,アルバイトとかするとか聞きますねえ.でも実際に高校生に
なってみれば,そんなバイトする暇などなく,やっぱり身の回りのもので
時間が過ぎていく,そんな高校生でした.どうしても欲しい,と言って
買ってもらったのは,浪人してたころに,ワープロ専用機を一台.今の
自分があるのはこのワープロのおかげです.大学に入ってから情報処理の
授業を受けた時に,タッチタイプでキーボードを叩けるというのはすごく
自分を凄いモノだと勘違いさせたようです.というか,タイピングの早さは
その後チャットなどを始めたせいでどんどん早くなっていったのですが.

でも.大学生になっても勤労意欲は湧かず.親御さんからの仕送りを受け
身の回りを簡素に整え,あとは欲しいもの特にを欲しがることもなく淡々と
生活してましたなあ.オーケストラに在籍してたころには理不尽なくらいに
金を取られた気もするけれど,抜けたあとは特に忙しがることもなくずっと
コンピュータルームでトラブル対応してたり.お金にはなりませんけども.

基本的に金を稼ぐのに向いていないのかな.まあ欲しいものはあるけれど,
稼いで買うか買わずに我慢するか,の選択で大抵の場合後者を選ぶ人生を
歩んでいるのは確かなようです.そういう話をすると家族のひとたちなどは
大激怒するのだけれど.商売人の血が受け継がれなかったのか,それとも
ただ単に勤労意欲がないのか.お安い就職活動もしたけれど,がしがし働き
金を貯めて増やして儲けるぞ,なんてかけらも思いませんでした.実際に
今の仕事も「自分のペースでやらせてくれる」ということが一番だしなあ.
もらえるお金はそんなに多くはないけれど,毎朝カチリカツリと時間を拘束
されないというのはとてもありがたいことです.睡眠に関する不安はいまだ
根強く残っているので.薬の副作用なのかなんなのかよくわからないけれど
毎日毎日,寝入りばなの記憶がまったくない,そのうえその間は意味不明の
行動を取っていたりするので,睡眠前に却って消耗していたり.だけどまあ
そういう病とも付かず離れずのオトナな関係のスタンスをとるようにして
のらりくらりと生きています.古傷やトラウマや病気のせいにするだけでは
能がないからねえ.年を取ると開きなおるという芸が身につくものなのかも
しれませぬのう,ふぉっふぉっふぉ.そして相変わらず静かに諦めながら
一日を繰り返し過ごします.エネルギーを使わない地球と心に優しい生活.

かと言って悟りの境地にはまだ達してないからなあ.縁側で茶をすすって
過ごすような生活にまではいかないのだな.やっぱり本屋に行けば本を買い
電気屋ではCD-Rメディアのスピンドルを手に取る.まあ微々たるものですが
やっぱり消費はするからねえ.毎日ごはんは食べないといけないし.ここで
霞が食えるようになればいいなと思うのですが,残念ながら人間ですから.
少しの蓄えと,ごはんが食べられるくらいの収入があれば生きていけますが
それよりはほんの少しだけ生活を潤おすためのお金があればなあ,程度に.

…こんなことばっかり考えてるのはやっぱり勤労意欲のないダメ人間かな.
いつぞやにかどこかにて聞いたアジ文句にこんなのが.「諸君,諸君らに
夢はあるか?あるなら働け,努力だ」…夢なんてありませんが何か問題でも?


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