さようならが近いので


いろいろと難はあるものの,ずいぶん自分勝手に暮らさせてもらってます.
普段は穏健派を気取っているくせに場合によっては烈火のごとく怒っては
あちこちに喧嘩を売り飛ばし,ぷいっと顔を見せなくなるのはお家芸の域.
それはそれでなんとかなるものです.なんとかなるようになったりします.
多くを望まないで,ただ譲れないものもあって,今あるもので充分だという
ことを知り,淡々と生きる.のほほんとしながらもそのあたりの線だけは
きちっとつけております.それは遠吠えとかじゃなく.まあいいんですが.

だけどまあ欲しくてしょうがない時もあり.それは楽器だったり本だったり
いろんなものだったりするのですが,そういう時も心を鎮めてただひたすら
待つようにしています.少しずつ迎え入れる用意をして,ゆっくりと信じて
なんとかものにしてきました.10年待って戸籍上の名前を変更することに
成功したり,8年かけてずっと探していた本を古書市で入手したり.決して
頑張らないけど焦らずあきらめない.踏ん切りの悪い性格だとも言います.

時間がもったいない,と叱られたりもします.だけどあまり急いでも自分の
ペースで進むことができなかったら,もうそれは自分のものではないような
気がしてしまいます.もちろんすべてのものごとを自分のわがままを貫き
押し通すことは無理なのですが,なんとか周りに溶け込める程度に,だけど
あいかわらず行雲流水かつ虎視眈々と生きていたいものです.のほほんと.

大学のそばに住んでいるというのは善し悪しで,大学関係者とはいつまでも
繋がりが強いのですな.気が向けばいつでも一緒に茶でも飲めるし,時には
徹夜でカラオケ,などというバカで若さのみ溢れる学部生みたいな所業も
やらかしてしまうことができます.ほかのみんながつき合ってくれるなら.

そしてまた今年も春が来て,たくさんの友人が遠くへ行ってしまいます.
いつまでも学生気分でバカやってるわけにはいきませんから.ぼくだって
月曜になれば仕事が待ってるし,仕事が終わらなければ夜遊びすることも
できません.ぼくはたまたま場所が移っていないというだけでなんとなく
まだ学生街をうろうろして仕事をしていますが,多くの場合は学び舎を離れ
遠くに行ってしまいます.今はまだ3月,ぎりぎり手を伸ばせば握手くらい
できるかもしれませんが,だんだん人は離れていくものです.いろんな人の
送別会の予定が詰まったスケジュール帳を見て,ぼくにしてはめずらしく,
淋しいと思いました.今年の春は花粉も少なく,こんなにいいお天気なのに
さようならが近いので,なおさらもう一度握手でもしてきちんとお別れして
おきたいなあと.行く雲のごとく,流れる水のごとく生きているはずなのに
季節の変わり目,ぼくは時々沈鬱になります.雲も水もどこかへ行く時には
淋しいと思ったりはしないのでしょうか.ぼくは雲や水のことも心配です.

また春が過ぎて,いたひとがいなくなる環境に慣れる頃,少しは薬の量が
減るのでしょうか.ぼくはやっぱりここでのんびり生きていくと思います.


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