坂の上のピアニスト

知人がピアノコンサートを開くと
いうことで,ご招待にあずかりに
神戸まで.三宮か….なにもかも
懐かしい.大学院時代には結構
うろちょろしたもんですが,最近
とんと御無沙汰でした.なんだか
駅前の店構えががらっと変わった
気がしましたが,それもまた世の
移ろいというものなのでしょう.

さて異人館通りへ向かう坂道を登り
勾配がキツくなる直前あたりにある
ライヴハウス.やっぱりこういう
軽妙洒脱なお店は大阪より京都より
神戸がよく似合います.入り口に
差しかかると二階から本日の主役が
手を振っている.挨拶しながら中へ
入り,パンフレットをもらって腰を
落ち着ける.ピアノソロのライヴは
初めてだなあ.席もあらかた埋まり
拍手とともにピアノが鳴り始めます.

今回のメインはラヴェル,やっぱり
フランスものは甘くてよいですな.
でもその中にバッハが入ってると
なんか浮く.メレンゲの砂糖菓子の
流線型の中に,どっしりがっしり
型抜きのビスケットが挟まった感じ.
メリハリが利いていると言うべきか.

昨年にお父様がお亡くなりになって
いたそうで,その思い出を含みつつ
プログラムは組まれておりました.
ピアノでは定番の亡き王女のための
パヴァーヌ,そしてお父様に縁の
深い曲であるらしきクープランの墓.

アンコールはバッハのフーガ,また
固いところです.正しい音楽とは
こういうものなのですよ,といった
平均律の底力を見た気分.そして
シューベルトの幻想で締め.実に
心地よい空間でありましたことよ.

惜しむらくは,手元が見える席に
座らなかったこと.あんなにも回る
指先を見てみたかった.まあ見ても
真似なんてできないんですけどね.
また次の機会を待っておりますー.

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